暑い日が続いていますね。
先日は台風もあり、全国的にグズついた天候。交通機関の遅れなどを気にしながら行動して
おりましたが、そんななか、雨にもマケズ、風にもマケない新幹線で名古屋まで行ってまいりました。
今回の目的は、毎度おなじみのTOKAI SUPER SHOPモデルの次期オーダーの準備。良質の材が入荷したとのことで、全国からTOKAI SUPER SHOPのスタッフが集まり、一路名古屋へ。
ん? 東海楽器製造は浜松なのに、なんでわたしは名古屋に行くのでしょうか。
実は今まではトーカイのギターを製作する場合、SUPER SHOPのディーラーは東海楽器浜松工場にて木材の選定などを行うのですが、今回はその先、名古屋。なんとギター工場では飽き足らず、東海楽器製造ご用達の問屋で木材を選定とあいなったからなのであります。
だんだん製造段階をさかのぼり、行くところまで行く感じになってきましたが、この調子で行くと、やがてはアフリカや北米などに赴き、良質な木材の伐採から始める日も来るのではないか、そんな出来るわけもない妄想にかられつつの旅となりました。(あとから考えると、ただ暑さにやられた妄想であると、自分を取り戻す私でありました。全部太陽のせいだ、と。)
倉庫に積み重ねられた無数の板材。
これを見てどんなギターになるのか、それを選定の段階で想像できるのは全国から集まったSUPER SHOPの目利きスタッフ。
今回も全国から集まった他店SUPER SHOPの方々とご一緒させていただいているのですが、競合相手というより、やはりそこはギター好きの集まり。お互いキープした材を見ながら「いいのが出来そうですね。」「これはサンバーストが映えそうな杢目ですね」などと盛り上がります。
倉庫内はもちろん冷房などありませんので、内部は岩盤浴場のような状態。
そのなかで板材となった一枚5kg程度のマテリアルを、5〜60枚ほど検品。
それをマホガニー、メイプル、アッシュなどマテリアル別に検品すること100数十枚。
暑さと上腕二頭筋の限界と戦いながら、重さと杢目を一枚一枚慎重に吟味しつつ、ギターの完成図を頭の中に描いて行きます。
・・・・と話を進めておきながら恐縮ですが、今回のセレクトで製作するギターの完成は冬。しばらくパーツなどの詰めやカラーの決定など、もう少しプロセスを重ねてゆきます。また動きがありましたらブログでご紹介いたいますのでお楽しみに。
さて、以下は同様のプロセスを経て春先にオーダーしたモデルのご紹介とさせていただきます。
この度入荷した宮地楽器オーダー品は、フレイム・メイプルとキルト・メイプルの両雄相並ぶラインアップ。
どれも私共がチョイスしたものが満足行くクオリティのものですので、じっくりご覧ください。
こちらのギターはLSを基本とした
TOKAI
LS-MIJ FT#153
こちらもLSを基にキルト・トップをあしらった
TOKAI
LS-MIJ QT#156
ちなみに、型番の”MIJ”は、私共宮地楽器の「MIYAJI」とMade In JAPAN「MIJ」のダブル・ミーニングから命名させていただいております。
問屋でゲットした段階の無垢のフレイム・トップ材。
こちらは完璧な並行線を描いたトラではありませんが、トップのカービングにあわせて
きれいな立体感を表現するタイプのフレイム。
均一ではないために、中央部と端でさまざまな表情を変化させる。
弾いたあとにギタースタンドに立てかけても、じっくり魅入ることができそうです。
貼りではなく、ソリッドでこれだけの目が出ている材は本当に貴重なものです。
このトップ材を使用したのがこちら。
両方の画像を見比べていただけると分かりますが
細か過ぎず、ワイドともいえない絶妙なフレーム。見る部分、角度によって表情を変える木目は
木が成長してきた一生を物語る履歴書。
外観それ自体がさまざまなストーリーを語り、
やがては弾き手のプレイに何かインスピレー
ションを与える。そんな話し相手になるような
ギターであると思っております。
Tokai HLS-MIJ-PFT #124LD
こちらはファンシーなキルト・メイプル材。
どんなに優秀な金太郎飴職人でも作れないであろう、そのパターンの連続性と奥行きの深さに
大自然の力を感じずにはいられません。
それゆえ、このような材をトップに使用したとき、照明によって奥行を感じさせる妖しい
陰影を造り出し、また見る角度によっても表情を変化させるのです。
そしてそれはあたかも、美しく穏やかな湖面に一石を投じたときに拡がってゆく波紋のよう。
地球の持つナチュラル・ヴァイブレーションをも感じることが出来るのです。
このキルトを用いたのがこちらのギター。
HLSの表面が持つ、緩やかな曲線。
その表面張力の限界を超え、溢れてきそうな
キルト。
大自然の中で永年かけて熟成してきたキルト
メイプルの持つ自然のうねりが、波状と
なってフロント、リアの両ピックアップの
磁力に作用するようなダイナミックなパターン。
何のために成長してきたのか自身では知る由もない木材が、今数百年、数千年を経て、初めてその意味を知る。この希少材と対峙するとき、アーティスティックなギタリストは何かインスパイアされずにはいられないはずです。
さて、いかがでしょうか。
ぜひ一度お手にとってお試しください。
ではまた。 by MODA
- 2015.07.29 Wednesday