この記事は2013.10.24 Thursdayに書かれたものです。
Char Free Spirits MUSTANG
とうとう完成となりましたFENDER CUSTOM SHOP製MUSTANG。
MUSTANGというギターが持つキャラクターやFENDERブランド内での立ち位置を考えると、USA製で発売されるのはもちろん、カスタムショップで製作されることなどかつての状況からは考えられなかったプロジェクトの実現です。
商品ページはコチラ
もともとMUSTANGは1960年代中期にミドルクラス用のギターとして開発された経緯から、カスタムショップのモチーフとはなりづらかったのでしょうか、また当時の製作意図、ビギナー〜ミドルクラス向けのギターでも高いクオリティを実現するというレオ・フェンダーの考えから、ほとんどのパーツが専用設計となっており、ストラトキャスターやテレキャスターなど他のフェンダー製品との共有パーツがないことも製品化が難しかったということが本音でしょう。
しかも今回のプロジェクトのゴールは、単なるUSA製ではなくカスタムショップのクオリティでの「究極のMUSTANG」。
このプロジェクトを実現するギタリスト、CHARといえば10代からプロギタリストとして第一線で活躍し続ける、言わずと知れた最高のプロフェッショナル・ギタリスト。また、そのスタイルに魅了されたファンやフォロワー・ギタリストも一般のギターファンとは一線を画し、MUSTANGについてはだれもが一家言を持つと云われるほどのツワモノ。
そんなメーカー、CHAR、ファンのだれもが納得できるクオリティのMUSTANG製作を命題として与えられ、しかもイメージを壊さないで新しいエッセンスを加える。
かなりシビアな仕事、ギタークラフト界の「MISSION IMPOSSIBLE」と言ってもいいのではないでしょうか。
さて、今回のMUSTANG。
ギターの外寸はCHAR所有の67年製のものから正確に採寸したとのことですが、いったいどのあたりがVINTAGEのものと違うのでしょうか。
まず、カラーが「御召茶」と言われる中間色。CHARさんの写真集などを見ると本人のファッションも実におしゃれなカラーコーディネートをされていますが、このカラーも絶妙なセンス。雑な表現しか持たない私は青とでも緑とでも言ってしまいそうなこのカラーの名は「御召茶」。生まれて初めて出会ったその色の名と色合い。この時点で地元の先輩に新しい知識を教えてもらったようでとてもありがたいです。
そしてポジションマークのCのカタチをした「月」。
古くからのCHARファンとしてはJohnny Louise and Char のCが月のカタチとして出現したその日から脳裏を離れないCHARのアイコンです。
手にしてみると、ほどよい重量のボディバランス。オリジナルではポプラやアッシュ、バスウッドなど混在していたMUSTANGですが、今回のカスタムショップはセレクテッド・アルダーを採用。それだけでVINTAGEギター屋を巡って当たり/ハズレを探していく無駄な時間を省ける、そんなヨロコビを感じます。
VINTAGEのMUSTANG。1960年代中期にCBSに買収されたばかりのフェンダー社はシェアを拡大することを考えます。特にMUSTANGなどのスチューデントモデルは量産体制を確保するために、古い治具もフル稼働(50年代後半のスラブボード製作用のネック用治具などもひっぱり出してきたためスラブもあり)、材も余材をムダなく使用することが多かったようで,中にはアッシュやアルダーもあったようですが、多くはポプラと言われており、そのボディ材によりサウンドの個体差が大きいことがMUSTANGファンの間で共通認識でした。そういった理由からも今回のアルダー選定は均一なクオリティ実現のためには正解と思います。
さて実際に手にとってみます。
第一印象として60年代のMUSTANGに慣れた手では、グリップ感の違いに気がつきます。
これはMUSTANGとして今回初めて採用された9.5"Rの指板によるところが大きいのではないでしょうか。
きちんとセッティングしていないVINTAGEのMUSTANGにありがちな、指板アールがきつくスケールが短いために起きるチョーキング時の音詰まりを一挙に解消しています。この心配りはGOODです。2音半くらいのチョーキングをしても全く問題ありません。
ネックに関してオフィシャルHPでは特に指定スペックではないようですが、こちらの個体はラッキーなことに柾目。
ガシっとした質感でネックの鳴りを感じることができます。
もう一つリファインされたのはヴィブラート・ユニット。
基本構成は変わらないものの、スプリングは弱めなものをチョイス、極めて軽いアクションが得られます。このあたりはCHARさんのお好みで。とのことです。
さらにもっと細かいところを見てゆきますと、アームバーが簡単に抜けてしまわないようにスリットが入っており、MUSTANGに泣かされ続けた現場の意見が反映されています。
MUSTANGのアームバーはVINTAGEものの場合、ブリッジ部の小さな穴からイモネジで止めており、オリジナルの状態ですとイモネジの先にナイロンブッシュが入っていてアームを固定しているのですが、このイモネジはかなりの率で紛失し、ナイロンブッシュに至っては見たこともない、知らないというMUSTANGファンも多いです。
今回のリファインではどうなっているか。残念ながらこの愛らしい欠点を持つイモネジ+ナイロンブッシュ方式はなし。その代わりになんとイモネジの先にボールベアリングを埋めることによってアームバーに圧をかけ、ナイロンブッシュの代わりとしています。この、ピックの数分の一の大きさのイモネジの先にまで神経を使い、専用のパーツを作成するところを見てもこのモデルが「究極のMUSTANG」と言っていいところです。 (それにしてもこのパーツ高そうですね!)
ご興味がおありの方はブリッジプレートの焼入れ処理についての経緯はオフィシャルページでご覧になったと思いますのでここでは述べません。細部の画像をご覧いただき、質感を感じていただければと思います。
さて、細部からご案内いたしましたがピックアップももちろん専用設計です。
ヴァリエーションの増えたサウンドレイアウトもオフィシャルのホームページに詳しいのでここでは割愛させていただきますが、全体的に輪郭がはっきりしたエッジ感のあるものに仕上がっています。MUSTANGの中域を残した、鼻にひっかかかるようなクセのあるVINTAGE MUSTANG独特なテイストを残しつつ、都会的なエッセンスを加えた、アーバンなサウンド。言ってみればちょうど戸越銀座の街並み(CHARさんの実家)のように都会の香りを残しつつ、どこかホッとする人間味あふれる空気感がこのギターから漂ってきます。(ワタクシも実は生まれも育ちも城南地域でございます)。
VINTAGEのMUSTANGが少し泥臭さを残した「早馬」ならば、こちらのFREE SPIRITSは都会を駆け抜ける「スポーツカーのMUSTANG」、そんなイメージでしょうか。とてもクールなサウンドです。
最後に、こんなことを販売する立場で言うのもなんですが、正直に申し上げてワタクシのこの製品に対する第一印象は「MUSTANGで40万円超え?高っ!」ということでした。
おそらく多くの方がそうお思いのことでしょう。しかしながら、詳細をチェックして微に入り細に入り見てゆきますと、これぞまさに「究極の」という表現がふさわしい納得感ある「買い」のギターであると言えます。
MUSTANGであることを保ちながらこれ以上突き詰めることができない完成度。
大人となった我々がMUSTANGに求めるものがすべて備わっている、Char Signature Mustang® "Free Spirits"。
お分かりになる大人の方にぜひお持ちいただきたいギターです。
ではまた。
by MODA
とうとう完成となりましたFENDER CUSTOM SHOP製MUSTANG。
MUSTANGというギターが持つキャラクターやFENDERブランド内での立ち位置を考えると、USA製で発売されるのはもちろん、カスタムショップで製作されることなどかつての状況からは考えられなかったプロジェクトの実現です。
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もともとMUSTANGは1960年代中期にミドルクラス用のギターとして開発された経緯から、カスタムショップのモチーフとはなりづらかったのでしょうか、また当時の製作意図、ビギナー〜ミドルクラス向けのギターでも高いクオリティを実現するというレオ・フェンダーの考えから、ほとんどのパーツが専用設計となっており、ストラトキャスターやテレキャスターなど他のフェンダー製品との共有パーツがないことも製品化が難しかったということが本音でしょう。
しかも今回のプロジェクトのゴールは、単なるUSA製ではなくカスタムショップのクオリティでの「究極のMUSTANG」。
このプロジェクトを実現するギタリスト、CHARといえば10代からプロギタリストとして第一線で活躍し続ける、言わずと知れた最高のプロフェッショナル・ギタリスト。また、そのスタイルに魅了されたファンやフォロワー・ギタリストも一般のギターファンとは一線を画し、MUSTANGについてはだれもが一家言を持つと云われるほどのツワモノ。
そんなメーカー、CHAR、ファンのだれもが納得できるクオリティのMUSTANG製作を命題として与えられ、しかもイメージを壊さないで新しいエッセンスを加える。
かなりシビアな仕事、ギタークラフト界の「MISSION IMPOSSIBLE」と言ってもいいのではないでしょうか。
さて、今回のMUSTANG。
ギターの外寸はCHAR所有の67年製のものから正確に採寸したとのことですが、いったいどのあたりがVINTAGEのものと違うのでしょうか。
まず、カラーが「御召茶」と言われる中間色。CHARさんの写真集などを見ると本人のファッションも実におしゃれなカラーコーディネートをされていますが、このカラーも絶妙なセンス。雑な表現しか持たない私は青とでも緑とでも言ってしまいそうなこのカラーの名は「御召茶」。生まれて初めて出会ったその色の名と色合い。この時点で地元の先輩に新しい知識を教えてもらったようでとてもありがたいです。
そしてポジションマークのCのカタチをした「月」。
古くからのCHARファンとしてはJohnny Louise and Char のCが月のカタチとして出現したその日から脳裏を離れないCHARのアイコンです。
手にしてみると、ほどよい重量のボディバランス。オリジナルではポプラやアッシュ、バスウッドなど混在していたMUSTANGですが、今回のカスタムショップはセレクテッド・アルダーを採用。それだけでVINTAGEギター屋を巡って当たり/ハズレを探していく無駄な時間を省ける、そんなヨロコビを感じます。
VINTAGEのMUSTANG。1960年代中期にCBSに買収されたばかりのフェンダー社はシェアを拡大することを考えます。特にMUSTANGなどのスチューデントモデルは量産体制を確保するために、古い治具もフル稼働(50年代後半のスラブボード製作用のネック用治具などもひっぱり出してきたためスラブもあり)、材も余材をムダなく使用することが多かったようで,中にはアッシュやアルダーもあったようですが、多くはポプラと言われており、そのボディ材によりサウンドの個体差が大きいことがMUSTANGファンの間で共通認識でした。そういった理由からも今回のアルダー選定は均一なクオリティ実現のためには正解と思います。
さて実際に手にとってみます。
第一印象として60年代のMUSTANGに慣れた手では、グリップ感の違いに気がつきます。
これはMUSTANGとして今回初めて採用された9.5"Rの指板によるところが大きいのではないでしょうか。
きちんとセッティングしていないVINTAGEのMUSTANGにありがちな、指板アールがきつくスケールが短いために起きるチョーキング時の音詰まりを一挙に解消しています。この心配りはGOODです。2音半くらいのチョーキングをしても全く問題ありません。
ネックに関してオフィシャルHPでは特に指定スペックではないようですが、こちらの個体はラッキーなことに柾目。
ガシっとした質感でネックの鳴りを感じることができます。
もう一つリファインされたのはヴィブラート・ユニット。
基本構成は変わらないものの、スプリングは弱めなものをチョイス、極めて軽いアクションが得られます。このあたりはCHARさんのお好みで。とのことです。
さらにもっと細かいところを見てゆきますと、アームバーが簡単に抜けてしまわないようにスリットが入っており、MUSTANGに泣かされ続けた現場の意見が反映されています。
MUSTANGのアームバーはVINTAGEものの場合、ブリッジ部の小さな穴からイモネジで止めており、オリジナルの状態ですとイモネジの先にナイロンブッシュが入っていてアームを固定しているのですが、このイモネジはかなりの率で紛失し、ナイロンブッシュに至っては見たこともない、知らないというMUSTANGファンも多いです。
今回のリファインではどうなっているか。残念ながらこの愛らしい欠点を持つイモネジ+ナイロンブッシュ方式はなし。その代わりになんとイモネジの先にボールベアリングを埋めることによってアームバーに圧をかけ、ナイロンブッシュの代わりとしています。この、ピックの数分の一の大きさのイモネジの先にまで神経を使い、専用のパーツを作成するところを見てもこのモデルが「究極のMUSTANG」と言っていいところです。 (それにしてもこのパーツ高そうですね!)
ご興味がおありの方はブリッジプレートの焼入れ処理についての経緯はオフィシャルページでご覧になったと思いますのでここでは述べません。細部の画像をご覧いただき、質感を感じていただければと思います。
さて、細部からご案内いたしましたがピックアップももちろん専用設計です。
ヴァリエーションの増えたサウンドレイアウトもオフィシャルのホームページに詳しいのでここでは割愛させていただきますが、全体的に輪郭がはっきりしたエッジ感のあるものに仕上がっています。MUSTANGの中域を残した、鼻にひっかかかるようなクセのあるVINTAGE MUSTANG独特なテイストを残しつつ、都会的なエッセンスを加えた、アーバンなサウンド。言ってみればちょうど戸越銀座の街並み(CHARさんの実家)のように都会の香りを残しつつ、どこかホッとする人間味あふれる空気感がこのギターから漂ってきます。(ワタクシも実は生まれも育ちも城南地域でございます)。
VINTAGEのMUSTANGが少し泥臭さを残した「早馬」ならば、こちらのFREE SPIRITSは都会を駆け抜ける「スポーツカーのMUSTANG」、そんなイメージでしょうか。とてもクールなサウンドです。
最後に、こんなことを販売する立場で言うのもなんですが、正直に申し上げてワタクシのこの製品に対する第一印象は「MUSTANGで40万円超え?高っ!」ということでした。
おそらく多くの方がそうお思いのことでしょう。しかしながら、詳細をチェックして微に入り細に入り見てゆきますと、これぞまさに「究極の」という表現がふさわしい納得感ある「買い」のギターであると言えます。
MUSTANGであることを保ちながらこれ以上突き詰めることができない完成度。
大人となった我々がMUSTANGに求めるものがすべて備わっている、Char Signature Mustang® "Free Spirits"。
お分かりになる大人の方にぜひお持ちいただきたいギターです。
ではまた。
by MODA
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