この記事は2009.05.29 Fridayに書かれたものです。
フェンダーを使わない偉人
フェンダー、ギブソンといえば言わずと知れたギター界の老舗中の老舗。
おそらく世界中のミュージシャンがアマチュア・プロを問わず一度は手にし、または一生
手離すことのない、馴れた道具として愛用していることでしょう。
著名なミュージシャンならばなおさら、トレードマークとして愛用していないにしろ、フェンダーを手にしている写真の2〜3枚くらいは発見できるものです。
しかし、その偉大なるベーシストはフェンダーを手にしている写真をあまり見たことがありません。
その人の名はポール・マッカートニー。
ビートルス関連の本や写真、CDからWEB上の豊富な情報が満ち溢れている2009年現在においても、彼がフェンダーを持っている写真は、UFOやネッシーの写真よりも発見が難しいものです(笑)。(*注1)
ウィングス時代にはリッケンバッカーやヤマハ、ソロではWALなど他のブランドもしっかり使っている彼。彼はフェンダーが嫌いなのでしょうか?
何か因縁めいたものも感じてしまいます。
いやいやしかし、いろいろビートルズ関連の本を読んでいると、どうやらそうではなさそうです。
では真相はいかに。もはや説明不要の天下のビートルズではありますが、デビュー前にハンブルグで駆け出しの貧乏バンドだったころ、ドイツやイギリスではアメリカ製のフェンダー製品は輸入楽器で高価なもの。もちろん当時のポールにとっても高嶺の花でした。
いつかはフェンダーを手にしたいとの夢を持っていたものの、完全に「手に入らない楽器」としてポールの脳裏に刷り込まれていて、その影響でフェンダーには手が伸びなくなった、と本人が述べているそうです。
今では工場全部を買い取れるほどの経済力もあるでしょうに、興味深い話ですね。
さて、ポールのトレードマークといえば、やはりこのヘフナーです。
なぜポールがこのベースを手に入れたのかは諸説ありますが、修行時代のハンブルグ中心部に、唯一あった楽器店に飾ってあり、価格が手ごろ、ボディが左右対称で左利きでも違和感ないデザインであったことなどから購入をしたというのが有力な説です。
楽器店に長く勤めていますと、お客様が運命の一本に出会う場面をいくつか体験しますが、ポール・マッカートニーの場合、その後トレード・マークになるのみならず、独特なベーススタイルを確立してゆくための不可欠な道具であるヘフナーと早期に出会っていたことは非常に興味深いところです。
また、ロック史上初めてフィードバック奏法をレコーディングした曲は ”I feel fine"といわれていますが、ジョンがGIBSON J160Eをアンプに入れたと同時にポールがヘフナーで A音を弾いたときにジョンのアンプに起きたノイズが「フィードバック」の始めて物語だそうで、こちらもヘフナーなしにはありえない話だったかも知れません。
さて、そんなことを踏まえながら当店のヘフナーを弾いてみましょう。
第一印象は誰にとってもそうですが、非常に軽い。現代のベース・スタイルから考えますと、大丈夫かな?といった印象をもつ位、華奢な印象です。しかしながら、その構造はすでに何百年と培われたヴァイオリン製作のノウハウが応用されているため、イメージからくる弱さとは裏腹に強固なものです。
軽さとスケールの短さが相まって、演奏は自然とハイフレットまで指が移動してゆきます。
このあたり、才能のあるミュージシャンであるポールが使えばハイフレットも自由自在に使い、新しいスタイルを作っていったのも頷けます。
サウンド面では、現在のベース・サウンドと比較しますと、非力ではありながらホロー構造によるエアー感がピッキングのあとにしっかりついてきて心地よいものです。
また、当然サスティンも長いものは期待できませんが、思ったところでスッパリ切れる適度な、かつコントローラブルな減衰をつくり、早いパッセージでも決してモタモタしないもの。バンドで演奏したら、ちょっと多めにミュートしたバスドラムと上手くからめば独自のビート感をつくれそうな予感がします。(もちろんタオルでミュートしたスネアともバッチリ!)
フェンダーに育てられたわれわれ凡人は「フェンダーを使わない」などと断じて言えませんが、ヘフナーには確かに「これでなければならない理由」がたくさんありそうです。
今までさまざまなコピーモデルが出回っていましたが、こちらのヘフナーはしっかり作りこみがされた復刻モデルです。
ヴァイオリン・ベースを弾いたことのない方はぜひ一度体験されると、ビートルズ・サウンドの秘密に一歩近づくことが出来るかも知れませんね。
ポール・マッカートニーにヴァイオリン・ベースを出会わせた楽器店のように、貴方に運命の一本、奇跡の一本をご案内できますよう、日々努力してゆく所存でございます。
(*注1)ポールがフェンダーJB(ブロックインレイのレフティー)、テレキャスター(サンバーストのレフティー)、エスクワイヤ(右用を転用)を持った写真がわずかにWEB上にあるようです。ご興味のある方は海外サイト等で検索してみては?
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- 2009.05.29 Friday