ALEMBIC/SSG SERIES1 1978【VINTAGE】【USED】
ハードウエアにくすみがありますが、全体的に大きなダメージを受けた痕跡はなく、電気系統もすべて動作確認済。経年を考えると良好なコンディションです。



- 2017.08.07 Monday
- Vintage Guitars
ハードウエアにくすみがありますが、全体的に大きなダメージを受けた痕跡はなく、電気系統もすべて動作確認済。経年を考えると良好なコンディションです。
1979 GIBSON LESPAUL CUSTOM
こんにちはiです。
こちらのコーナー、実は2年近くぶりなんですが、皆様いかがお過ごしでしたでしょうか?
第1回目のES-335から独自の視点でヴィンテージギターについてお話してまいりましたが、何度かここで申し上げてきました通り、よりコアなヴィンテージギターの話題は専門書や音楽雑誌の特集等にお任せして、この場ではもっとフランクに、でも真面目にヴィンテージギターについて考えていきたいと思います。
そんなわけで第5回目は1979年製レスポールカスタムの登場ですが、「え?79年??どこがいったいヴィンテージなの???」とお思いになられる方もいることと思います。それは私も同様で、ヴィンテージと名がつくものは1969年製までと以前までは相場が決まっておりました。しかしながら、それからまた実際に年月が経ってしまいますと、「70年代も今からすりゃヴィンテージぢゃね?」という気運が高まるのは人情というもの(ホントかよ、汗)。
それは冗談としても、確かにメイプルネックのレスポールってこの時期にしか存在しないわけですね。この年代が本当にヴィンテージと呼んでよい代物なのかという議論はこの際さておき、では実際にどのようなギターであるのか皆さんと探っていきたいと思います。では早速行ってみましょう。まずはピックアップ・キャビティから、ご覧の様にディープジョイントは69年までですのでコチラは違います。ただ、ボディエンドのジャック部分からスイッチまでを一本のドリルでガーっと穴を開けています。これがギブソン流。たしか70年代後半のTOKAIのカタログにもそんなことが書いてあった気がします。
「ウチは本家ギブソンが使用しているのと同様なドリルを手に入れて、一気にボディーに穴を開けています、だから凄いんです」
みたいなことが…。そんなこともあり、当時のTOKAIのレスポールに近年すごい価値がついているのでしょうか??まあ話がそれるのでやめておきますが(苦笑)。というわけでこれが本家。リアPU部分もご覧下さい(メイプルトップであることがよくわかります)。
さて次です。レスポールカスタムですのでご覧の様にエボニー指板です。この指板が重要だと個人的には考えてます。50年代のハカランダ指板のレスポール以外に、音が好きなレスポールはメイプルトップのカスタムなんですが、理由はインディアンローズ指板よりエボニー指板の方が音が締まってリッチだからです。コーンって抜けてくる感じ??しかもこちらの年代ですとネックがメイプル3ピースですので、よりブライトで締まったサウンド&70年代前半までの様なフレットレスワンダーではありませんので、通常のチョーキングプレイでも全く問題なし!
そしてこの頃のネックシェイプは歴代レスポールの中でもかなり薄め…。そう来たらやはり、当時のハードロック系ギタリストが多数使用するのもわかりますね。続いてはコントロールキャビティですが、俗に言われる「お弁当箱」という金属プレートのシールドを開けるとボディーにポットが直付けされていない、これまた70年代後半仕様の配線が出てきます。確かに製造する上でもこの方が合理的だったのかもしれませんね。当時は親切にもジャックまでがこのようなシールド加工をされております。
70年代(69年以降)のレスポールというかギブソン製品は、そのほとんどがクレーム対応の為の改悪の連続であり、弾き手にとってはどんどん製品自体が悪くなっていったイメージがあるのですが、ギブソンからしてみればそれらすべてが自社工業製品の改良(クレーム防止、製造作業能率拡大の為)と言えるわけですね。ですのでこちらのシールディング処理もその一環なのでしょうし、決して全てが改悪されていったのかと言えばそうではないです。
ただ、ことギターというものに関してだけ言えば、このようなメーカーサイドからみた進化が決してユーザーにとって“善”ではなかったということです。そのことはその後30年経ったギブソンの現在の仕様を見れば歴然と証明されている気がします。
以上のことからこの年代のギブソンはヴィンテージギターという尺度から見たら、非常に好みが分かれると言えますが、では当時のギブソンは全てに於いてダメなの?と訊かれたらそれはNO!と私は答えます。前述しましたように実際にこの時代のレスポールにしか出せないサウンドというのがあり、塗装を含めた作りにしても、さすがギブソンと感じる部分は多いからです。
今でいうならば稀少と言えますし、個人的には決して嫌いではない年代ですねー5kg以上のレスポールを抜かしてという前置きはありますが(笑)。
というわけで、久々にうちのタカダに登場いただき、こちらの記事を締めさせていただきます。【以下タカダ記載】
(この時代のレスポールにしか出せないサウンド)
それを証明するかのように、この年代のレスポールカスタムを頑なに使い続けているギタリスト、ジョン・サイクスがいます。タイガース・オブ・パンタンに始まり、ラスト・メンバーに一人となったシン・リジィ、ホワイトスネイク、自身のプロジェクトのブルーマーダー、サイクスと現在にいたるまで、78年製のレスポール・カスタムがトレードマークとなっています。
メジャーシーンでのキャリアの始まりであるタイガース・オブ・パンタン加入時の所有機材は、このレスポールカスタムとBOSSのOD-1だけだったというウワサ(あくまでもウワサです。)もあり、数々ライブ、レコーディングを共に闘ってきた盟友としての”思い入れ”は相当なものだとは思いますが、もちろん、彼がこのギターのサウンドに惚れ込んでいたことは間違いありません。
ゲイリームーアにインスパイアされたスピーディーでフラッシーなフレーズやエモーショナルなチョーキングの”泣き”のソロ、ハイゲインなディストーションの中でも、しっかりとした音程感を保っているのは、サイクスの”腕”はもちろんですが、メイプルネックであるという一つのファクターを担っている気がしてなりません。
こちらのレスポールはジョン・サイクス・フリークはもちろん、全てのレスポール・フリークのハードロッカーに一度は試して欲しい1本です。
【以上、タカダ記載終わり】
はい、タカダさんありがとうございました!
そんな70年代後半のレスポールカスタムがセール期間中かなりお買い得なお値段になっています。
商品ページはコチラ→GO!!
皆さんご静聴ありがとうございました。
i
みなさんこんにちは。
だーれかさんがー・だーれかさんがー・みーつけた?
誰かさんがみつける前に、みんなにわかりやすい大きい秋になってしまいました(笑)。
でもまだ少し暑さを感じる時間帯もあり、それに合わせてまだアロハで仕事しておりますワタクシでございますが皆様におかれましてはおかわりありませんでしょうか。
さて音楽の秋。
何かいい音のするギターでも入って来ないかななどと思っていますと、入ってきました、
GIBSON
ES-335TD。
こちらのギター、60年代後半の特徴あるスリムネックで弾きやすいものなのですが、入荷の時点では外観は汚れ、ホコリも堆積してございましてとてもキレイとはいえないギターでありました。
ワンピースネック、オリジナルのナンバード・ハムバッカーがついている時点で、ある程度のサウンド・クオリティーはワクワクものですが、アタリハズレのあるヴィンテージものであり、そのままの状態ではそのポテンシャルはまだ未知数でございます。
でも、これが入念にチェックを重ねてゆきますと、ネックが極めて好感の持てるコンディションであることが判明いたします。あえて「ネックが」と表記させていただきましたのは、ギターを全体的に見回しますと、上にも書かせていただきました通り、決してミントにキレイなものではないからでございます。では、フレットもヘリがあり、ネックの塗装部もややラッカーが減っているこのギター。なぜワタクシが好感の持てるネック・コンディションなのかと申しますと、その真直さにあります。
ネックまわりを、ヴィンテージ・ギターにとっては厳しい基準でございますが、新品とほぼ同じチェックをしてみます。工場出荷されたギターと30〜40年以上経ったギターを同じ土俵で見るということは、現状で即戦力かどうか見極めるためでございます。
方法は1.全体のソリのチェック。2.最初のフレットと最終フレットをおさえ、中央部の弦の浮きを見る。3.1弦〜6弦で全フレットがフラットになっているか、他独自の方法で判断してみます。
だいたいのギターは新品・中古・ヴィンテージにかかわらずこの時点でどこかでフレットがあたったり、何も問題ないと思われるギターにも、普段使わないような6弦のハイフレット部などに問題があるものも少なからずあったりします。
でも、ここでこっそりお教えしますと、今回ご紹介の335。最近出会ったネックのなかでは新品・中古を含めてかなり良好な状態でございました。
67年ごろのものですので経年変化は出きったあと。この後環境によって動くようなこともなさそうです。ネックがしっかりして、われらがナンバード・ハムバッカー。クロームカバーでこの時期ですとTバッカーとみて間違いないでしょう。弾く前から期待感で胸が高まっておりましたが、アンプに通すと期待を全くうらぎらない60年代後期のロックサウンド。
セミアコでありながらソリッド感バリバリの立ちのよいサウンド、少し歪ませたときの太くうなるドライブ感。小さい秋を見つけたワタクシのこころに染み入る次第でございます。
こちらのギター、この年代に特徴的なスリムなネックを持ち、弾きたいときに手が伸びやすく、弾き手の思うままにクリーン/クランチ/ドライブを自在にコントロールできるレスポンスのよさ。
永くつきあいたいギターといえます。
外観はさほど美品でもないため、見た目の華やかさはありませんが、このギター、好きなコンディションです。
店頭で、また空き時間があれば2Fスタジオで試し弾きができます。秋の夜長、ぜひお時間をお作りいただきお試し下さいませ。
ではまた。
商品ページはコチラでございます。
by MODA
ヴィンテージ・ギターを所有することを考える場合、大きくふた通りの考え方があります。
ひとつは嗜好品として捉える場合、もうひとつは自身のサウンドを奏でる道具として捉える場合。
そのどちらも間違いなくヴィンテージを所有する大きな理由でありますし、このどちらかでないといけないのではなく、両者のグレーゾーンももちろん存在します。
ギター雑誌等を見ると若手/ベテラン、国内/国外問わない多くのギタリストがヴィンテージ・ギターを所有し、その愛器の写真が何本も掲載されていたり、それを見て「自分も生涯の一本を…」なんて感じてしまうことはよくあることでしょう。
ではヴィンテージ・ギターというのは何故そこまでギタリストの憧れであり、現在でもその輝きを放ち続けるのか?そして内外のギターメーカーがこぞってヴィンテージ・レプリカを発売し続けるのか??その理由に迫ろうと去年から続けているコチラのコーナーですが、今回は1本のギターを掘り下げるのではなく、大きくヴィンテージ・ギターのその魅力について一緒に考えていきたいと思います。
さて、実は数ヶ月前に私が接客させていただいたお客様に、年のころなら20代半ばのおとなしめでとても綺麗な女性がいらっしゃいました。
それは土曜日でした。
珍しくヴィンテージ・ギターのブースにその女性がずっとギターを眺めてたのです。しばらくの間そこはちょっとした異空間であり(苦笑)。 そして何やら紙にいろいろ書いている。なんだろう??ちょっと気にはなったので、コチラも恐る恐る
「なにか興味おありですか?」
すると「…い、いえ」
自分の世界に入り込んでいるゆえ、まあ邪魔してはならぬとそれ以上はこちらも何も言わず。
その後、何十分か経過後、結局その女性は楽譜というか本を一冊もってレジに来ました。ふむふむ。 土曜日はそれで終わり、普通なら全く記憶から遠ざかる出来事です。
そうしたら翌日、日曜の午前中か昼頃、その女性がまた同じ場所からヴィンテージ・ギターを眺めている。たまたま近くにあるPCの場所にいてそれに気付いた私はそっと近寄りつつ、またまた恐る恐る(笑)
「ヴィンテージ・ギターに興味がおありなんですか?昨日もいらしてましたね」
かなり緊張気味のその女性
「え、ええ…すごく好きなんです。え、でも実は私ギターのことってよくわかってないんですけど、素敵だなあと思って…」
「そうなんですか…」
そしていろいろ話を聞いていると、実はレッチリのジョン・フルシアンテのファンの方らしく、ギターを始めたいのだが何にして良いかわからなくて、だったらジョンと同じモノをと考えていろいろ調べていたら、彼が使っているのがヴィンテージのストラトで100万以上するものなのがわかったらしい。でもストラトキャスターが何なのか?テレキャスターが何なのか??とにかく何も知らないわけで、その説明を彼女は楽器屋に聞きたかったのだが、いろいろ心境的に複雑だったと。そんなわけだったらしいのです。
というわけでっ、ここぞとばかりに教えてあげました(笑)。ヴィンテージとは何か、フェンダーとは何か、ストラトとは何か、そしてエレキギターとは何か…。もちろん、新品のフェンダーも紹介しつつ(何故か女性は全く興味を示さない)、興味はあるというこれまたヴィンテージのムスタングの歴史も説明し、全くもって歴史の勉強の様な接客でしたが(苦笑)、その女性はいちいち納得しておられたので相当頭が良い人だろうとは感じたわけです。
そしてまたその方が戻った場所は土曜と同じ場所…。
目線で言えば45度上の方に立てかけてある66年製のストラトをじっと眺めている。
「やはりストラトがいいです」
どこかうつろな目をしながらそう呟きました。
66年製のストラトがジョン・フルシアンテのギターとは年代が違うことはすでに説明済みであり(彼のは50年代のサンバーストとプリCBSのサンバーストローズで、実は私もジョン・フルシアンテってマニアでないけれど好きなギタリストなので、彼の使用しているギターは大体知ってたわけです)、それでも本物のヴィンテージからのみ発せられるオーラに惹かれているのは横にいてわかって、実は私も以前そういう時期があってこんな仕事をやっているので、そんな彼女の気持ちがよーく判るわけです。
するとためらいがちに奥ゆかしく66年製のストラトを見上げながら
「あのストラトが好きかもしれません」
私「ぢゃ下に降ろしますんで心ゆくまで見て触って良いですよ」
2本あった同じ年代のストラトをスタンドに立てかけて見せたのですが、直感的にというか触りもしないでそのうちの片方が良いという(バックパネルのスプリングカバーが付いていたというのもあったのかもしれません)。
ちなみにああいった時の女性の決断力の早さと芯の強さは半端ではないです(汗)。
もう片方のストラトは見向きもせず、ただ迷っているのは買うか買わないかだけといった様子。
目に落ち着きが全くなくなり泳いでいる。その表情がなんとも素敵であって、しかも奥ゆかしいゆえコチラも何故かキュンとくる(笑)。ただ普段接客する時ほど簡単に背中を押せないのは、それが98万もするギターだからであり。
「とりあえず音聴いてみます??」
「いえ、あのー」
「わかってます。自分が弾きますんで横で聴いていて下さい」
そうしますというので試演室に入ったんですが、そこから緊張するのは逆にこちらです。だってあれだけウンチクたれておいて、これで音のイメージが違うと一言言われたら楽器屋としてしばらくは立ち上がれませんっ
そんなわけで気合いの演奏(苦笑)。
ちなみにその女性ですが、これからギターを始める人です。音楽教室にも通いたいとおっしゃっていたので私が「こんなギターを教室になんて持っていったら先生ビビりますよ(笑)」なんて言ったら真顔で「やはりヤメた方がいいですか?生意気ですよね全然弾けないのに」と言うから私
「いえいえいえいえいえいえっ」と首を何回も横に振りました次第です(苦笑)。
音を出してしばらくしたらご満悦の表情(ほっと肩の荷が下りる)。するとまた落ち着きが無くなり、目が泳ぐ。考えてるなあ…と思ったのですがあまり余計なことを言うのはやめてその方の意思にその場は任せました。
で、ちょっと間を空けて、軽い感じで「いっちゃいますか?笑」と言うと「はい」と女性。
「ありがとうございます」
そんなわけで最終的にそのお客様ですが、98万円もする66年製のストラトとアンプも必要ですよね?とおっしゃるので勧めた練習用マーシャルギターアンプ12,600円をお買い上げになったんですが、そのギターとアンプのアンバランスさと言ったら今まで見たことが無いくらい究極でありました(爆)。
でもカッコ良いですっ。買い方がまさに音楽が好きで、憧れて、自分も弾きたくなってという久々に爽快でコチラを感動させてくれる様な素晴らしいお客様でした(アンプなんて本当はサービスで付けたい金額なんですが、事情がありまして申し訳ないですって感じであり)。
そして清算の際、支払いのデビットが通らず、銀行に引き出しに行ってくれたんですが、待っている間は複雑でした。このまま帰ってこないんぢゃないかとか。こういったカタチで裏切られるとショック大きいんですよねトラウマになるというか(笑)。
しばらくして戻って来てくれて「ほっ」。時間がかかったのは50万までしか引き出せなかったかららしい(今は一日に50万以上の現金引き出しは無理なんですねー、そんな大金ないからわかりませがっ、苦笑)。まあそれはそれで50万という頭金を頂き目出たく商談成立。ちょっと可哀想だったのは銀行側の都合でこの日にお持ち帰り出来なかったということです。代わりに写真を撮らせてくれとおっしゃるので、いかようにもなわけでした。
それにしてもっ。私のキャリアの中で歴代3本指に入るこの日の出来事でした。
もう、その女性がギターを取りに来られるまで完璧に調整してあげて待っていようかと思いまして、嫁に出すというより婿に出す感じ??(笑)
そして数日後めでたく、そのギターはその方の所有物になったわけです。
ヴィンテージ・ギターというものを考える時、前述いたしました通り、嗜好品として持つという考え方と道具として持つという考え方はあります。それはどちらでも良いのです。
ただし、私の考え方を僭越ながら申し上げるならば、それはいつまでも音楽に対する愛情だったり、憧れだったり、夢であって欲しい。ただ金儲けの為だけに右から左へ取引されるのはこういう仕事をしていて矛盾はしておりますが、悲しいことです。
やはり楽器ゆえ、ギターの方も大切にして下さるお客様のもとに嫁ぎたいに決まっております。
そして、ヴィンテージ・ギターというのはコレクターズ・アイテムとしても、プロユースな道具に於いてもある意味究極なギターたちです。
オーナーが大切にすればするほど“数10年熟成してからでしか出ない本当の豊潤なサウンドとその奥深い魅力”を放ち続けてくれることでしょう。
Vol.3 Fender MUSTANG BLUE 1966
Vol.2 Fender STRATOCASTER SB/R 1966
もう何の説明もいらないエレキギター史上、不動の名器であること間違いの無い“FENDER STRATOCASTER”。1954年の発売以来、マイナーチェンジを繰り返しながら現在でも進化し続ける、他に類を見ないデザインとその機能性は、発表以来いつの時代もミュージシャンたちのかけがえのない道具として選ばれ、使用されてきました。しかしながら、不遇の時代というのも経験してきているのがこのSTRATOCASTERです。60年代半ばから後半にかけてこのギターはFENDER社カタログの奥隅に追いやられました。そしてそれを救ったのが言うまでもないJIMI HENDRIXでした。ジミヘンがこのギターの潜在能力の全てを引き出したと言っても過言ではないでしょう。そのジミヘンがエクスペリエンス時代によく使用していた当時の新品がこの1966年製STRATOCASTERでした。まさにロックを、ブルーズを、ギタープレイそのものを、そして時代までをも変えたギターを2回目に取り上げます。レオフェンダーがFENDER社をCBSに売り渡したのが65年と言われており、その後のFENDERのことをCBS FENDERと呼んでいます。CBS FENDERイコール大量生産のイメージが強いのですが、66年は売り渡された直後であり、よってプリCBS時代の工法がまだ生きていた最後の年代と言ってもいいでしょう。その象徴がオールラッカー塗装と言えます(67年途中からポリ塗装)。
そして66年からはこのようなラージヘッドが採用されるようになるわけですが、ヘッドの厚みがプリCBSより厚いのがこの年代の特徴です。写真でおわかりの様に、クルーソンのストリングポストが全て露出していません。このヘッドの厚みがやはりサウンドに影響しているのは否定出来なそうです。ネックデイトの読み方ですが、左の13が機種名(年代によって数字が変わります)、次が製造月これは4月ですね。そして年、最後のBはネックシェイプとなり、これはBシェイプ(スタンダード/ナット幅1.5/8インチ)ということになります。
このスタンプの書体にときめく方もずいぶんとおられるかと思います(笑)。次にネックジョイントの仕込みですが、この隙間です。確かにきっちりとはまっている方が弦振動の伝達率は良いに決まっていますが、ヴィンテージのストラトに関してはこのくらいの隙間はざらにあります。それでも生きている様に鳴ってくれるところがヴィンテージのヴィンテージたる所以であり、マジックなんですね。
結局この時代、まさか40数年後にこのギターにこんな価値が付くとはFENDER社の誰もが想像もしなかったでしょう。次にピックアップですが、これがグレーボビンのオリジナルです。ブラックボビンよりエッジがあるサウンドが特徴的で、よりロック向きとも言われていますが、66年製に関しては先ほども触れました通り、どこかプリCBSを思わせるギリギリの年代65年製と68年以降の攻撃的なサウンドとの中間と申しますか、繊細さとワイルドさを併せ持ってる感じです。
ボディー内部のザクリにはヴィンテージ好きの方には御馴染みの“S”文字がハッキリとあります。
ピックガードに隠れて見えない部分をよく見ると赤の塗装痕がまだ残っています。本来ならば赤がもっと強めにボディー内部の方まで吹かれていて、それが褪色してこのような味わい深い3トーンサンバーストに経年変化していることが確認出来るわけです。コチラはポット、キャパシター、SW共にオリジナルでした。
そんなわけで今回も計ってしまいました。
写真左上が66年製に付いていたオリジナル・シンクロナイズド・トレモロユニット、右下が最近のVINST用です。イナーシャブロックの重さは同じで、サドル及びプレートが最近のモノは若干重いようです。ただしこれは単に重さが同じであれば良いという問題ではなく、金属素材そのものの質で鳴りというのは変わると思われますので、やはりヴィンテージにはヴィンテージのユニットを付けるのが最適でしょう。ただし、経年劣化は避けられませんので、多少の音の犠牲は覚悟で使用する場合のみサドルを今モノに交換したりはありと考えられます。装着するとこんな具合となります。
何とも形容しがたい風格ですね。今モノのレリックには絶対に出せない何かがあります。
塩ビピックガードの色具合、ピックアップ&ピックアップカバーの微妙な削れ具合、そしてノブの微妙なカタチと色…。
熟成されています(笑)。
そういえば“PAT.PEND”と書いてあるこちらのサドルも、ヴィンテージパーツの単体売りでは最近ほとんど出なくなりました。貴重ですので所有されている方は大切になされた方がよろしいです。最後にどの写真にしようか迷いましたが、通常あまり見ることがないであろうスプリングをはずした状態の裏側の写真です。こちらの66年製の場合はバックル傷もなく、かなり良い状態というのがお解かり頂けると思います。
ついでですのでもう1枚。ネックジョイント部の写真です。奥に見えますボディー側ジョイント部に入っている“シム”ももちろんオリジナルです。
まとめ
一体何本のストラトをジミヘンが弾き潰した(?)のかわかりませんが、後期のバンド・オブ・ジプシーズで使用していた貼りメイプルの白黒があまりにも有名で、そのイメージが強烈に印象的ではありますが、生涯特にレコーディングにおいて気に入って使用していたといわれているのが、67年製だそうでそれだけは壊さなかったと言われています。
ストラトというとどうしてもクローシャン・ヘッドのプリCBS期か、あるいは70年代初期のラージ・ヘッドに人気が集中しがちですが、いわゆる過渡期と言われるこの時期の不遇だった頃のストラトも独特な個性を持ち、本物のサウンドを持つギターとして燦然と輝いていると言えるのではないでしょうか。
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